ものすごい狭いターゲットに向けた映画な気がした。
内向的で妄想癖のある人(そして他人と接することより、自分の内面と向き合うことで心が癒やされるタイプ)にしか分からない内容のような。
自分はそのターゲットにピンポイントで当てはまる人間だったので、現在進行形で共感する部分もあったけど、それよりも昔を思い出してウワーと叫びたくなるシーンも多かった…。
若い頃って潔癖なくせに、自分には甘くて、他人にだけ期待し過ぎたり。
主演ののんちゃんは、無言のシーンの表情が上手くて、セリフにはない言葉にしていない気持ちがダイレクトに伝わって来ました。
LINEの返答のすれ違いで噛み合わないまま終わって寂しくなるのとか、親友の妊娠に気付いてショックを受けるけど言葉に出来なくてスルーしたまま明るく振る舞っちゃうのとか、すごく分かる。
この映画に出てくるAって、イマジナリーフレンドと解釈したんだけど他の人はどう思ってるんだろう。
みつこがリラックスしているとき、楽しんでいるとき、『ザッパーン』という効果音が入る。(本人が言うこともある)
心と行動が一致していて、Aとみつこが一体化している瞬間。
後半になって、みつこが現実逃避のあまり妄想世界の海岸に行く。
潜在意識(海)と顕在意識(陸)の境目がこの海岸なのかなと。
そしてAは、みつこにさよならを告げて水平線の向こうへ消えていく。
寂しかった。
大きなことでも小さなことでも、こういう別離を繰り返して少しずつみんな大人になっていく。
だけど、ずっと同じ場所に居たいと思うことは悪いことなのかな。
時々でも、Aがみつこの所に戻って来てくれたらいいなと思った。
テーマは「自分ひとりで完成した世界からの脱皮」だと思うので、Aとの暮らしを肯定するのは違うのかも知れないけど、人間の性質ってそうそう変わらないというか。
内向的な人間が無理をして外向的に生きようとしてもどこかで破綻するので、バランス取って生活できるなら別にどんな風に生きてもいいような気がします。
余談ですが、ドレス買って歯医者さんに会いに行くシーン、自分のキャパ以上の行動を突き動かされるようにしてしまう時ってあんな感じかもなと妙に納得してしまった。
インテリアとかみつこのお洋服も可愛かったな。
原作は綿矢りさ著「私をくいとめて」
こっちも読んでみたい。
同じ大九明子監督で綿矢りささん原作の「勝手にふるえてろ」も面白かった。