ものすごく望郷を感じる映画だった。
まだ物心つく前、もしくは言葉を覚える前、こんな風に日がな一日、太陽に思いを馳せながら風を感じ、動植物を見つめながら暮らしていたような気がする。
まだ常識とか固定観念に支配されるより前の話だ。
映画を見るうち、幸せだった頃の情景が何度も浮かんできて困った。
だって私はもうこんな風に生きられないから。
世間一般の幸せと自分の幸せは違うのに、自分の心に従い、大事に思うものだけに心を寄せ生きることの難しさったら何だろうか。
正しさばっかり求めようとするから生きるのが苦しくなってしまうのだ。
「俺は、何度だって生きるよ。生きるのが好きなんだ。」
そうだった。私もそうだった。忘れていた。
「…今まで…生えていたか?」
ふるふるとツタの葉が揺れる。
このシーンがとても好きだ。
主演の山崎努さんは2012年に出版したエッセイ「柔らかな犀の角」でも熊谷守一の事に触れている。恐らくこの「モリのいる場所」は、山崎努さんの発案だったのではないかと思っている。
このエッセイ、読書日記なんですけど山崎さんの人柄が出ていてとても素敵だった。
他者に向けた目線がとても優しくて。
昔やってたブログ(多分2013年頃)でも描いてた山崎さん。当時はドラマ「世紀末の詩」の未DVD化を嘆いていたんだけど、未だ配信などもされてないみたいです。